研究紹介

当研究室で行なっている研究の概要を紹介します。

バイオの原点 有機化学

  • 分子を組み立てる出発点はここ、そして分子を自在に操る者が先端をも制す!
  • 新反応開発から生物活性化合物や医薬の合成へ

理工学の観点からのバイオ研究としては、自然にある物質や現象を単に観察・解析するだけでなく、それらを人工的に応用利用することが重要です。

我々のグループでは、バイオ研究の対象である有機分子を思いどおりに合成・変換する新しい合成手法の開発を行い、それらを利用して天然の有機化合物や人工の医薬などの生理活性化合物を実際に手に取ることを可能にしてきました。

特に最近では、新反応を基軸として、いかに短工程で効率よく合成するか、いかに安全な試薬を利用し、不要な廃棄物を軽減するかなど、持続可能社会に必須な「効率性」、「安全性」および「経済性」を重視した未来型反応開発を展開し、次世代の「ものづくり」に貢献するべく研究を推進しています。

エキサイティングな有機合成化学

有機合成反応の開発を行っていると、えてして想像を超える「非常識」な現象が起こります。

我々のグループでは、こういったエキサイティングな現象を見逃さないように注視し、見つけた現象を体系化することによって、新概念・新反応機構を開拓して斬新な分子変換反応を開発すること、それらを利用して新しい有機化合物を合成することを研究の基盤としています。

その「非常識」な現象をはじめに発見するのは、ベンチに向かって実験を行っている人(学生)です。

学部生、大学院生、学年を問わず、その現象を手にするチャンスが皆にあります。

生物活性化合物の合成

従来の生物活性化合物や医薬の合成は、既存の手法を組み合わせて行うため、効率的とは言えないケースもあり、問題点が山積しています。

我々のグループでは、上述の斬新な分子変換反応から生み出された新規な有機化合物を利用することにより、次世代にふさわしい効率性、経済性、および環境調和性を満足する生物活性化合物や医薬の合成にチャレンジしています。

更に、これまで合成が不可能と考えられていた新規な有機化合物を実際に手にすることにより、新しい発想に基づく応用利用を可能にし、思いもよらぬ有機分子の新機能開拓へ展開できると期待しています。

―高校生向け―「生物活性化合物や医薬を化学合成する」とは?

数百~千程度の分子量から成る分子は、生物や細胞のスケールからみると非常に小さいですが、たんぱく質・DNA等の「巨大な分子」に直接作用することにより、その巨大な分子の機能を発現させたり、失活させたり、調整することができます。

こういった分子を「生物活性化合物」と呼んでおり、人間は古くから、例えば薬草として摂取・利用してきました。

現在では生薬・抗生物質など医薬品として広く使われています。

これら分子の生産を植物、微生物、あるいは動物に頼っている場合には、そもそも微量しか得られなかったり、変異によって突然に手に入らなくなってしまったり、というリスクがありますので、生物活性化合物を化学によって、人工的につくること、つくれることが重要です。

さらに、人工的に生物活性化合物をつくることができれば、活性を高め、副作用を抑えるための、分子のかたちを改良した化合物(医薬)を創ることにつながります。